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第14話 古洋館への招待

Penulis: いろは杏
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-20 19:00:00

 不知火探偵学園を出て専用車に揺られること約一時間。鬱蒼とした森を縫う山道へ入ると、窓の外は深い霧に沈み、世界は輪郭を失った。車内の三人――猛、青野、白河――は、それぞれに同じ感覚を覚える。

 ――濃霧は単なる天候ではなく、外界との連絡を断ち切る幕のようだと。

 猛は未知の現場が近づく高揚とわずかな緊張に喉が乾き、青野は隔絶は演出として非常に効果的だと冷静に評価し、白河は視界を奪う白さに、情報が削がれていく心細さを胸の奥に抱く。

 やがて車は古びた鉄門の前で止まった。蔦に覆われたプレートには、辛うじて『黒百合邸』の文字。運転手がリモコンを押すと、きしむ音とともに門が開き、車は敷地内へと滑り込む。

 霧がほどけ、館が姿を現す。重厚な石造りの洋館に、純和風の家屋が寄り添い、異なる時代と文化が無理やり結婚させられたような接合部を晒していた。

 意匠の細やかな出窓やバルコニーのすぐ隣に、風雪に耐えた瓦屋根が重なる。庭園も同じく混交している。西洋式の幾何学的花壇の途切れに、苔むした灯籠が唐突に立つ。黒々とした土の片隅には、名の由来を誇示するかのように、妖しく濃い紫の黒百合が霧雨に濡れて俯き、甘い匂いを微かに放っていた。

 総じて美しい――ただし、どこか手入れが斑で、意図して不気味さを残しているようでもある。赤星は思わず息をのむ。写真の印象など浅かったのだと、目の前の異形の調和が教えた。

 玄関ポーチに車が停まる。重い扉が静かに開き、初老の男性が姿を見せた。背筋は真っ直ぐ、顔には深い皺、眼光は鋭い。年の頃は六十前後、仕立ての良いスーツの落ち着きが、むしろ隙のなさを際立たせる。

「ラストホープの諸君だな。学園より話は聞いている――この館の調査ということだったな。この館の管理人、黒田巌だ。ようこそ、黒百合邸へ」

 低く通る声。必要最小限の情報だけを与え、それ以上を渡す気はないと、挨拶そのものが示している。三人は、今回の訪問の表向きの理由が『館の調査』であることを改めて胸に置いた。

     * * *

 ホールに入ると、既に四人の男女が待っていた。黒田は
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